半覚醒状態

土曜日も出勤することになった。

普段夜型の俺が土曜日ばかりは 朝日と言う名の殺人光線を浴びながら仕事に出向かないとならないのである。つっても朝１０時からなんだけど。
夜型人間にとって朝の１０時なんてのは夢心地真っ只中特命係長只野仁なのであり、これからお色気シーンだってのに布団から這い出すのは至難の技だ。

９時に起きればいい。だが、そんないきなりの真人間化が果たして俺に出来るのか？　答えは否だ。"しょうがねぇから朝まで将棋"の結果が角落ち、飛車落ちでのトライアンフだ。

８時５５分。そろそろ用意しようかなと思い始めた時が一番危ない。体は完全に自分の物では無くなっており、思考とは裏腹に勝手に "ベッドに横たわり三十秒ほど目を瞑ってみる" などというギリギリボーダーゲームを始めるのである。｢ケンスケさんのチャレンジですっ！｣などとナレーションまで入り出す始末。あぁすげぇ・・成功するとダーツで車を当てる挑戦権まで得られるのか。そりゃもうやるっきゃ無ぇだろ、YES or GOだよこんちくしょう。
だが、結局いっつも当たらない。だってあのダーツ 針がついてねぇんだもん。そのお約束の流れまでわかっているのにチャレンジしてしまう。世知辛い世の中だよぉ・・。んで｢このあとは "水戸黄門"｣というＣＭスポットが流れてやっと実世界の俺は動き出すのだ。
その間５分。この時ばかりは右脳１００％で思考回路が働いており、俺はこんな世界が大好きだし、あこがれる。だがたまにそこで実世界でいう３０分間 水戸黄門を見てしまい、痛い目にあうのだ・・。だってしょうがねぇじゃん、黄門様役のモーガンフリーマンがかなり良い味だしてんだもん。

そんで、なんとか体を起こし仕事をしてくるのだが、仕事も終盤になると呂律もろくに回らない。｢いいですよ｣　は　｢いいっソヨ｣　になり、お前はチョ何カンだよ？いいえ私は宮廷女官のチャングムでございます。｢このはし　わたるべからず｣か・・何も思いつかねぇ・・目ぇあけたら視界一面に広がるお花畑ってこと無ぇかな・・無ぇよなぁ・・つ～か、まずチャングム全然そんなキャラじゃねぇし。などとナチュラルハイがもたらすシニカルスマイルで一人ほくそ笑むのだ。

いやぁほんと半覚醒状態って素敵だよ。